例えば、10円から100円に値上がりした銘柄があるとします。この銘柄を20円で買えた人は、差し引き80円の儲けになります。この銘柄を80円で買えた人は、差し引き20円の儲けになります。これは、小学生でもわかるとても簡単な計算です。
この話で大事なのは、20円で買えた人がいる一方で、80円になるまで買えなかった人がいるという事実です。20円で買えた人は、この銘柄が上がるという兆候(サイン)を何らかの方法で“早く”感じたからこそ、「買い」を決断できたのでしょう。要するに、80円で買った人よりもタイミングが良かったのです。
もっとわかりやすい例を挙げてみましょう。例えば、パチンコ。今までお金をつぎ込んでいた台に見切りをつけてほかの台に移ったすぐ後、別の人がそれまで自分が打っていた台で遊戯を始め、あっという間に「大当たり」を引いたと、いうようなことは想像以上によくある現象です。いわゆる「お座り一発」です。そして、これも、結局、タイミングだといえます。現実的には不可能なことですが、仮に「あと何回転で当たる」ということがわかっていれば、台に見切りをつけることはなかったはずです。
このタイミング、事前にある程度、察知することはできないのでしょうか? 結論から言うと、パチンコのようなギャンブルではなく、資産運用としての株式投資やFXでは、「タイミングを知ること」は可能です。テクニカル指標を使えばいいのです。
ギャンブルでの大当たりは、突き詰めれば、乱数を引くことにありますが、株式投資やFXにはそういう要素はありません。過去の値動きを観察することによって、ある程度の規則性(傾向)を見出すことができるからです。そういう規則性(傾向)をまとめたものがテクニカル指標でもあるのです。
世の中には、さまざまなテクニカル指標があります。ありとあらゆる角度から「(もうすぐ)上がりそう」「(もうすぐ)下がりそう」という“時期”を掴もうとしています
しかし、ここで気をつけなければいけないことがあります。それは、巷で紹介されているテクニカル指標の中には、「使えない」もしくは「使いにくい」と判断せざるを得ないものが含まれているという事実です。
本書『5段階で評価するテクニカル指標の成績表』が生まれた理由は、実は“ここ”にあります。事実、今までアナリストたちがその立場上、「これは使えない」と思いながらも言えなかったものについても、本書の中でははっきり「使えない」と断言しています。
タイミングが合えば、相場で生き残ることはできます。相場のタイミングとは「谷越えを待って買い、山越えを待って売る」ということです。それは、使えるテクニカル指標を利用すれば、そう難しいことではないのです。
※本書では、著者である矢口新氏が自ら開発した「エスチャート(Survival Chart)」についても説明しています(算出式付き)。これは、「出来高の急増=転換点の暗示」という矢口氏の経験則をベースにした、本邦初公開のテクニカル指標です。
目次
プロローグ
第1章 テクニカル分析と、ファンダメンタルズ分析
美人投票(Beauty Pageant)
ランダムウォーク(Random Walk Hypothesis)
タペストリー第2理論(Tapestry Theory #2)
タペストリー第1理論(Tapestry Theory #1)
第2章 チャートとトレンド
プライスアクション理論(Price Action Theory)
ダウ理論(Dow Theory)
チャート(Chart)
トレンドライン(Trend Lines)
チャート・フォーメーション(Chart Patterns)
第3章 移動平均線とトレンド
移動平均線〔単純移動平均線(Moving Average)〕
エンベロープ(Envelope)
チャネルシステム(Channel)
加重移動平均線(Weighted Moving Average)
指数平滑移動平均線(Exponetial Moving Avarage)
グランビルの法則(Granville's Golden Rule)
第4章 オシレーター系のテクニカル指標
オシレーター(Oscillator)
移動平均乖離(かいり)率(Deviation from Moving Average)
モメンタム(Momentum)
ROC(Rate Of Change)
MACD(Moving Average Convergence Divergence)
RSI(Relative Strength Index)
ストキャスティクス(Stochastics)
ウィリアムズ%R(Williams %R)
第5章 トレンドフォロー系テクニカル指標
DMI(Directional Movement Index)
パラボリック(Parabolic Indicator)
第6章 時間を排除し、方向だけを示すテクニカル指標
新値足
カギ足
ポイント・アンド・フィギア(P&F: Point & Figure Chart)
第7章 最適化の罠
最適化の罠(Optimization Trap)
第8章 数字の魔力に注目するテクニカル指標
フィボナッチ係数(Fibonacci Number)
エリオット波動(The Elliott Wave Principle)
第9章 日柄(時間)と価格の関係を重視するテクニカル指標
一目均衡表
ギャン・チャート(Gann Angles)
ギャンの28の相場の金言
第10章 ボラティリティを組み込んだテクニカル指標
ボリンジャーバンド(Bollinger Bands)
第11章 出来高
出来高(Volume)
出来高と株価との関係
NVI(Negative Volume Index)、PVI(Positive Volume Index)
出来高移動平均線(Volume Moving Average)
OBV(On-Balance Volume)
逆ウォッチ曲線
MFI(Money Flow)
価格帯別出来高
第12章 その他のテクニカル指標
騰落レシオ(Up-Down Ratio)
NTレシオ(Nikkei225/Topix Ratio)
サイコロジカルライン(Psychological Line)
RCI(Rank Correlation Index)
第13章 チャートは自己相似性を持つ
ローソク足と酒田五法
第14章 テクニカル指標の思想と素のチャート
素のチャートに帰る
第15章 結論
谷越えを待って買い、山越えを待って売る
順張りか逆張りか(Trend Following vs Contrarian)
エスチャート(Survival Chart)
エピローグ 〜リスク管理(☆☆☆☆☆)〜
読者のご意見
この本は、各種テクニカル分析がどの程度実戦で使えるかとい...