トレーダーのための感情理論
ジャレッド・テンドラー,
フジタカシ
パンローリング
四六判 488頁 2022年10月発売
本体 3,800円 税込 4,180円
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読者の声
副題: 心理面の根底原因を探る10段階のレベル分析と行動計画
感情を抑制することなくゾーンに入る
ゲーム思考的トレード分析法
一流メンタルコーチが教えるマインドシステム
あなたがトレードする目的は、利益を上げることだ。にもかかわらず大事な局面で同じような失敗――過剰にポジションをたてる、価格を追いかける、無駄に損失を膨らますなど――を犯して、利益を上げきれずにいる。技術的なトレードスキルは磨いてきた。だが、出血は止まらない。なぜならこれらの原因は技術面にあるのではなく、欲、恐怖、怒り、あるいは自信や規律といった感情の領域、つまり「メンタルゲーム」の中にあるからだ。
「ゲーム」という言葉は、唯一絶対の解決方法はなく、上達するためのルールや戦略を想起させる。例えば、感情は意思決定プロセスを縮小させたり、そのプロセス全体をシャットダウンする力までも持っている。こういったメンタルゲームのルールや原則を理解しなければ、自分のミスにきちんと向き合えず、それを正すこともできない。著者が「メンタルゲーム」という用語を好むのは、そのためだ。投資・トレードも同様に、唯一絶対の勝利法はない。
本書はチャートの読み方やトレードの技術的テクニックやアイデアを提供するものではない。本書のテーマはあなたの感情からくる問題を特定し、矯正するための基盤となるシステム作りである。著者は投資家のみならずポーカーの世界チャンピオン、実業家、プロスポーツ選手など45か国にクライアントを持つ国際的メンタルゲームコーチだ。
巷にあふれるトレード心理学の指南書と本書との根本的な違いは、感情のとらえ方だ。たとえ感情を抑制しても、それは一時的な対応でしかない。自分の今の感情と戦ってはいけない。感情は今後良い方へ向かうか、悪い方に向かうのかを無意識レベルで提供しているシグナルだ。そのシグナルを追っていくことが現状把握につながり、長期的な根本治療となる。この作業は、トレードで行っていることと何ら変わらない。情報を収集し、ノイズを解析して、最適なタイミングを教えてくれるシグナルを注意深く探るのだ。
レベルアップに向けた正しい学習プロセスにもメンタルゲーム戦略が有効だ。著者はこの過程をシャクトリムシに例えている。体の真ん中を高く上げて前に進む、釣鐘状の動きで前進していく昆虫だ。これをABCゲーム分析と称し、メンタルと技術的スキルを切り離して客観的視点で精査していく。多くのトレーダーが前方の進歩だけに集中するが、後方が進まなければレベル全体の向上はない。
ここで登場するのが、「メンタルハンド履歴」だ。これは、パフォーマンス向上を妨げている欠陥の特定、その矯正をして次のレベルに進めていくための工程だ。
ステップ1 問題は何か
ステップ2 その問題はなぜ存在するか
ステップ3 欠陥は何か
ステップ4 矯正手段は何か
ステップ5 矯正を確認するロジック
このように、あなたの感情とそれにともなう行動を細分化し、コントロール不能に陥る本当の理由を見える化していく。恐怖という感情を見ても、ミスの根底にある自己否定がもたらすのか、自分だけ取り残されることが怖いのか、損失に対するものがベースなのかによって異なる。どの局面で現れるのかも人それぞれだ。本書では、その兆候を見つけるためのポイントや実例、質問事項などをあげ、自己分析という慣れない作業をフォローしていく。つまり、あなた自身がいかに内省して、自分自身を分析する作業を真剣に行うかがカギとなる。
あなたがどこの誰であろうと、メンタルゲームの基本ルールは変わらない。あらゆる課題は、このルールに従って解決する。売買の頻度が1時間に3回でも1カ月に3回でも関係がなく、またトレードする頻度、戦略、取引する市場の別を問わない。このシステムの仕組みを十分に理解したのなら、トレード以外にも応用可能だ。
さらに、あなたが個人投資家であろうと機関投資家であろうと、また、株式、FX、暗号通貨のいずれを取引していようと関係なく、トレーダーとしての潜在能力を発揮する方法を手にできる。今こそ、それを実現しよう。
目次
第1章 メンタルゲームの問題を解決するシステム
感情は悪ではない― 上手く利用して情報を得るためのシグナルだ
システムが必要な状況
第2章 パターンの見える化
感情をシグナルとして理解する
見える化
第3章 問題の根源を突き止める
代表的な学びの落とし穴
シャクトリムシの概念
後方の問題の原因究明
第4章 欲
欲の性質
代表的な欲の兆候
欲の見える化
欲の真因
第5章 恐怖
恐怖の性質
代表的な恐怖の兆候
恐怖の見える化
取り残される恐怖(FOMO:Fear Of Missing Out)
損失に対する恐怖
ミスに対する恐怖
失敗に対する恐怖
第6章 ティルト
ティルトの性質
代表的なティルトの兆候
ティルトの見える化
損失への嫌悪
ミスのティルト
不正のティルト
リベンジトレード
所有権のティルト
第7章 自信
自信の性質
自信過剰の代表的な兆候
自信不足の代表例
安定した自信
自信の見える化
認識の幻想とバイアスを正す
完璧主義
自暴自棄
希望と願望
第8章 自己規律
自己規律の性質
自己規律の問題の代表的な兆候
自己規律を改善するための一般的な戦略
自己規律が必要な局面を見える化する
忍耐不足
倦怠
結果にこだわりすぎる
意識が散漫になる
怠惰
先延ばし
第9章 問題を矯正する
頭の機能不全
リアルタイム戦略
進歩を評価する
第10章 進歩が見られないときのトラブルシューティング
パターンが認識できない
物事は好転する前に悪化する
燃え尽き症候群
脳の慢心
私生活がトレーディングに影響している場合
最後に
謝辞
著者紹介
ジャレッド・テンドラー(Jared Tendler)
カウセンリング心理学の博士号取得後、療法士の資格を取得。国際的メンタルゲームコーチとして活躍中。クライアントは45カ国に渡り、個人投資家や機関投資家、ポーカーの世界チャンピオン、実業家、eスポーツ選手、そしてゴルフではPGAツアー参戦選手のコーチをしている。
eスポーツ団体チーム・リキッドのスポーツ心理学長として、2017年ジ・インターナショナル(DOTA2)、インテル・グランドスラム(カウンター・ストライク)、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの4度の制覇(リーグ・オブ・レジェンド)を筆頭としたチームの数々の優勝に精神面サポートで大きく貢献。
スキッドモア大学のゴルフ部在籍中に、全米代表に3回選出、9大会での優勝実績を持つ。しかしメジャーな全国大会では結果を残せずその苦い経験をバネに、カウンセリング心理学の博士号を取得し、認定療法士として既存のスポーツ心理学では解決できなかった問題に切り込んだ。以後、単刀直入で実践的なコーチングのアプローチによって何千人もの人々のメンタルゲームの問題解決と最高のパフォーマンス発揮に貢献している。
著書に『ザ メンタル ゲーム』、『ザ メンタル ゲーム2』(いずれもパンローリング)がある。
訳者紹介
フジタカシ(ふじ・たかし)
上智大学法学部卒業。少年期に滞在していたヨーロッパで出合って以来のポーカー愛好家。レクリエーションプレイヤーとして、主にテキサスホールデムを嗜んでいる。訳書に『賭けの考え方』『確率の考え方』『ポーカーで証明した正しい意思決定』(いずれもパンローリング)がある。
(ウィザードブック337)
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