
本書では、小児期の逆境的な体験(Adverse Childhood Experiences:ACE)が、トラウマとしてどれほど深く心身に影響を及ぼすか、そして自らの子どもを虐待するにいたるような深刻なサイクルを打ち破るにはどうすればいいかが解き明かされる。
著者のナディン・バーク・ハリスは当初、多くの患者やその家族に見られる、小児期の有害なストレスと病気との関係を追っていた。やがて、性的暴行により成長が止まってしまった少年ディエゴと出会い、有害なストレスと生涯にわたって現れる病気の関係を確信し、本格的に調べはじめることになる。これが、長期間にわたる調査と研究にもとづき、弱い立場におかれ苦しむ子供に特化した治療実績で医学分野での先駆者とされる著者の出発点となった。
1990年代、米大手保険会社と国立疾病予防管理センターによる1万7000人以上の成人患者を対象にした健康調査は、虐待・ネグレクト、両親の薬物乱用または精神疾患・離婚などによるACEが、人体に長期的な影響を及ぼすことを明らかにする。この調査は、ACEの影響が「どうやって、どの程度」私たちの体に刻まれるのかのメカニズムの解明につながった。ストレス反応や成長速度をはじめさまざまな疾患(糖尿病、喘息、心疾患)にいたるまで、ACEが人間の生体システムを生涯にわたって蝕む可能性が高いこと、そして私たちが誰しも幼少期の環境の影響から免れない存在であることを証明した点で、とくに高い評価を受けている。
その後、サンフランシスコにある自分の小児科医院センター・フォー・ユース・ウェルネス(CYW)と全国の研究施設で調査をおこなった著者は、2015年にTEDトークに出演し大きな反響を呼ぶ。
そして本書では、科学的洞察にもとづき、ACEの原因究明と分析の経緯を力強い文章でつづった。医学的実績に裏付けられているとともに、著者やその夫と4人の子どもたち、また患者の実例をふんだんに引用した革新的な実践書でもある。過酷な小児期を過ごした人々や、彼らを後遺症から救おうとする関係者、そしてなにより愛する家族が生涯にわたる病気を患わないように願う読者から、トラウマの後遺症克服のための�犂�望の書�瓩箸靴涜燭�の賛同を得ている。
巻末には実用的な付録「ACEスコアツール」「CYW‐ACE質問票」が付いていて、ACEに初めて触れる読者にもすぐに役立つ1冊。
なお本書は『小児期トラウマがもたらす病 ACEの実態と対策』(2018年、パンローリング)の続編にして医療者による実践編ともいえる。
原書 "The Deepest Well : Healing the long-term effects of childhood adversity" by Nadine Burke Harris
「私たちが直面する極めて深刻な健康上の問題を見事に解き明かし追求する1冊。科学者としての厳格さと、医師としての思いやりを持って、バーク・ハリスは私たちのコミュニティにはびこる弊害の原因を鮮明に描いてみせた。大切な人が苦しんでいるならば、ぜひ本書を読んでみてほしい」
――ブライアン・スティーヴンソン、『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』(2016年、亜紀書房)著者
「本書は、この国の恵まれない人々が直面する最重要ともいえる問題――小児期のトラウマ――について書かれた胸が張り裂けるような、しかし素晴らしい本である。思いやり溢れる医師、そして一流の科学者として信念を貫き、バーク・ハリスは個々の物語に触れながら、画期的な研究を撚り合わせていく。私たちの誰もが深刻な問題を抱えており、この問題に取り組まない限り、被害者になるのは子供たちなのだと教えてくれる」
――J・D・ヴァンス、『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(2017年、光文社)著者
第1部 発見
第1章 何かがおかしい
第2章 ストレスホルモン
第3章 40ポンド
第2部 診断
第4章 赤い車と熊
第5章 大きな乱れ
第6章 スキンシップ
第3部 処方箋
第7章 ACEの解毒剤
第8章 実験、反対!
第9章 ガスリー・テスト
第10章 最強の緩衝材
第4部 革命
第11章 満ち潮
第12章 細菌とストレス
第13章 バックミラー
終章
付録
巻末の付録1「ACEスコアツール〜あなたのスコアは?」の「7」に誤りがありました。
訂正してお詫び申し上げます。
【正】 7 母親もしくは義理の母親が……しょっちゅう押されたり、つかまれたり、叩かれたり、物を投げつけられたり、場合によっては、蹴られたり、噛みつかれたり、拳で殴られたり、硬いもので殴りつけられたり、あるいは、少なくとも数分にわたって何度も殴りつづけられたり、銃やナイフで脅されたりしたことがある。
〔 はい いいえ 〕
【誤】 7 母親もしくは義理の母親が……しょっちゅう押したり、つかんだり、叩いたり、物を投げつけたり、場合によっては、蹴ったり、噛みついたり、拳で殴ったり、硬いもので殴りつけてきたり、あるいは、少なくとも数分にわたって何度も殴りつづけたり、銃やナイフで脅してきたりしたことがある。
〔 はい いいえ 〕
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