マーク・ファーバー博士は、間違いなく逆張り投資家の王様として歴史に名を残す人物となろう。一方、予測や投資の実績以上に、博士はずば抜けた洞察力や卓越なインテリジェンスをもって人々を魅力し続けていると思われる。
本書はたくさんの歴史の事実とデータに基づき、金融マーケットにおけるサイクル、景気バブル形成と崩壊する構造を分析し、プロ、アマチュアを問わず、人々はいかに間違った行動をとってきたかを総括している。
当然にように、これらのケーススタデイに通じ、博士は次なるゴールドを発掘できる秘訣をすばり授けてくれている。しかし、博士は本質的には「宿命論者」である。歴史が繰り返し教えてくれたように、人間の本質と心理が永劫不変である以上、トゥモローズ ゴールドもごく一部の人しか手に入れることができないと暗示している。これこそ本書の真骨頂であり、また相場の核心へ限りなく迫った真実であろう。
歴史を全体として捉えることが、今の時代を理解でき、また将来を予想できる基礎であることを納得させられながら、マクロな視点で大きな流れを汲むことの大切さを痛感している。この意味では、本書は単に投資本のカテゴリーを超え、歴史、哲学や人類心理など領域の教科書としても示唆を富む一冊となろう。これを読まずに投資を語るとすれば、その軽薄さに背筋が寒くなる思いである。
最後に、博士は30億の人口を要するアジアは世界に大きな影響を及ぼし、現在最も裕福な都市や人々がその高い地位を将来も維持できる可能性は低いと警告している。だからこそ、勝ち組とされてきた日本人こそ手に取るべきだ。
ちなみに、博士は日本株式の歴史的な売り場と買い場を誰よりも早くかつ明確に指摘していたので、いまだに日本人に周知されていないのが不思議で仕方がない。日本人投資家なら、本書を読まないのは無知か、傲慢か、あるいは両方であろう。