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フィスコ投資ニュース配信日時: 2026/08/13 11:07, 提供元: フィスコ クラボウ Research Memo(7):注力事業へ経営資源を集中し、事業ポートフォリオ改革をさらに加速する方針(2)*11:07JST クラボウ Research Memo(7):注力事業へ経営資源を集中し、事業ポートフォリオ改革をさらに加速する方針(2)■クラボウ<3106>の中期経営計画「Accelerate’27」の概要 5. キャッシュ・アロケーションと初年度の進捗 3年間の投資計画として、設備投資に210億円(そのうち注力事業へ87億円、環境投資に24億円)、M&Aに100億円の合計310億円を予定している。また、株主還元(3年間)には配当130億円、自己株式取得200億円の合計330億円を予定しており、成長投資と株主還元へバランスよく配分する方針だ。一方、その原資については、営業活動によるキャッシュ・フロー360億円※1、非営業資産※2の売却230億円、借入金など50億円により捻出する計画である。初年度については、設備投資60億円(うち、注力事業へ29億円)、配当43億円、自己株式取得71億円へ資金配分し、おおむね計画どおりの進捗を示すことができた。一方、原資に目を向けると、政策保有株式の価格上昇に伴い、このまま計画どおりに売却が進めば、「非営業資産の売却」(キャッシュイン)が約100億円上振れることになる。同社は、株価高騰により発生した余剰資金を、半導体製造関連やライフサイエンス事業へ向けた成長投資(M&Aを含む)を中心に充当する方針である。 ※1 研究開発費60億円控除後。 ※2 政策保有株式、遊休不動産の売却など。 (1) 株主還元方針 高水準で安定した配当を行うため、株主資本配当率(DOE)4%を新中期経営計画期間の目標値として設定した。また、3年間で200億円の自己株式の取得も併せて実施する計画である。初年度については、71億円を実施済みである。 (2) 政策保有株式の圧縮 2028年3月期までに連結純資産の20%未満まで段階的に売却を進め、そこで得たキャッシュは自己株式取得などに充当していく計画である。初年度については、73億円の政策保有株式を売却済みである。 (3) 研究開発投資(R&Dの強化) 3年間で60億円の研究開発投資を計画している。特に、技術研究所と各事業部との連携により、次世代の主力事業として推進している4つのプロジェクト(ロボットセンシング、セミコンソリューション、ライフサイエンス・テクノロジー、マテリアル・ソリューション)を本格化していく計画である。初年度については16億円の研究開発投資を実施済みである。 6. 資本収益性の向上に向けた道筋 同社の推計によれば、株主資本コストは6〜7%のレンジにあるが、株主の期待するリターンはさらに高いものと認識しており、中期経営計画の目標であるROE10%(以上)の実現やIR活動の充実などを通じて、PBRの引き上げ(まずは常時1倍以上の水準を確保)を目指す。特にROEの改善に向けて、事業ポートフォリオ改革や政策保有株式の圧縮によるROICの向上と株主還元の充実に取り組む計画で、初年度の実績は、PBR1.02倍、ROE10.2%、ROIC4.6%であった。 7. 弊社による中長期的な注目点 祖業の繊維事業を取り巻く環境変化などを踏まえ、これまで取り組んできた長期ビジョン2030(イノベーションと高収益を生み出す事業体制への変革)の方向性は魅力的で説得力があると評価している。また、前期よりスタートした中期経営計画「Accelerate’27」では、同社の強みが生かせ、かつ高い成長性と収益性が期待できる半導体製造関連領域及びライフサイエンス関連領域を注力事業に位置付けるとともに、組織の壁を越えて経営資源を集中する方針を打ち出し、いよいよ事業ポートフォリオ改革の姿が具体的に見えてきた。あとは、その実現可能性やスピード感、ポテンシャルの大きさをどう評価するかということになる。各領域における注目点は以下のとおりである。 (1) 半導体製造関連領域 市況の回復や事業基盤の整備が進んできたこともあり、足元の受注状況は上向いてきたが、今後さらに軌道に乗せるためには、性能や品質、コスト面はもちろん、安定供給体制や技術開発などを通じていかに半導体製造装置メーカーの需要(課題)に応えていけるかがカギを握るだろう。その点では、熊本イノベーションセンターにおける生産・開発体制の強化など、サプライチェーン全体での供給体制を整えてきた高機能樹脂製品の伸びが今後の業績をけん引する可能性が高い。また、AI向けなど半導体製造工程で着実に実績を伸ばしている機能フィルムや独自技術を生かした「KURANGRAFT」などの動きにも注目したい。このような差別化された製品を出し続け、成長領域の需要を取り込むことができれば、利益成長の実現はもちろん、市況の影響を受けづらい収益体質への転換も可能になると考えられる。 (2) ライフサイエンス関連領域 社会課題に目を向け、新たな価値を創出する構想であることから、労働力不足や生産性などに課題を抱える顧客との価値共創やパートナーとの協業がカギを握る。そのため、たとえば介護・臨床・食品分野など、これまでパイプが少なかった業界へのチャネル構築が不可欠となる。したがって、戦略的アライアンスやM&Aなどによる外部リソースの活用を含め、いかに顧客(市場)にアクセスしていくのか、そういう視点から今後の動向を見守る必要がある。本格的な事業化には長期目線が必要となる可能性があるが、ビジネスモデルを大きく変えるポテンシャルを秘めている。 また、今後の実現可能性を判断するうえで重要なのは、知的資本と財務資本による裏付けである。知的資本は言うまでもなく、これまで蓄積してきた技術力やノウハウ、知見であり、これをいかに応用し収益化していくのかがポイントとなる。一方、財務資本については多額の含み益を抱えた政策保有株式(投資有価証券残高約695億円)の存在が大きい。これまで資本効率を低下させる原因として投資家からは課題視される向きもあったが、今後はむしろ成長投資やR&Dへの活用により価値創造の原動力として捉えるべきである。同社は中期経営計画期間中に段階的に政策保有株式の売却を進め、そこで得た資金を成長投資や株主還元に配分する方針を明記しており、事業ポートフォリオ改革と同時にバランスシート改革においても大きな転換期にあると認識できる。以上を踏まえ、中長期目線でのポイントは、知的資本をどう収益に結び付けるか、財務資本をいかに活用するか、さらにM&Aを含む外部リソースとの連携をいかに図るか、大きくこの3点に集約されると言えるだろう。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫) 《HN》 記事一覧 |