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フィスコ投資ニュース配信日時: 2026/08/13 11:05, 提供元: フィスコ クラボウ Research Memo(5):2026年3月期は半導体市況の回復遅れ等で減収減益も計画上回る利益水準(2)*11:05JST クラボウ Research Memo(5):2026年3月期は半導体市況の回復遅れ等で減収減益も計画上回る利益水準(2)■クラボウ<3106>の決算概要 2. 2026年3月期の総括 2026年3月期は減収減益となったものの、業績が一旦踊り場を迎えた背景には半導体市況の循環的な動き(回復の遅れ)や戦略的な取り組み(構造改革費用)が大きく影響しており、同社の潜在的な成長性や収益性の低下を示すものでない。半導体市況の回復・拡大傾向が鮮明となった第4四半期以降、主力の高機能樹脂製品がしっかりと需要を取り込めていることは何よりもその証左と言えるだろう。また、製品群によって多少のバラツキはあるものの、各事業が予想に対して堅調に推移し、計画を上回る利益を積み上げたところは、同社の複合的な収益構造の強さをあらためて確認することができた。また、活動面では、安城工場の閉鎖を完了した一方で、熊本イノベーションセンターの新棟稼働や寝屋川工場(大阪府)のエリア拡大など、事業ポートフォリオ改革やサプライチェーンの再構築に向けて特筆すべき成果を示すことができた。また、高機能樹脂製品以外でも、成長性が期待できる半導体製造工程(後工程)において、同社の機能フィルムが高度な要求性能に対応しながら着実な深耕を図っているところや、半導体フォトレジスト工程に対して、同社独自の原料改質技術を生かした金属イオン除去フィルターの増産体制を整えたところは、今後に向けてプラスの材料と評価することができる。 ■トピックス 半導体製造関連領域での事業拡大に向けて事業基盤の強化を進める 1. 生産・開発体制の強化 同社は市場拡大が見込めるウェハー及び半導体製造工程向けに幅広い製品を提供している。具体的には、ウェハー製造工程向けにウェハー洗浄装置、薬液供給装置、半導体製造工程(前工程)向けに高機能樹脂製品、薬液濃度計、半導体製造工程(後工程)向けに機能フィルムなどをそろえている。なかでも、前工程の各装置用部品に使用される高機能樹脂製品が主力であり、業績への寄与度も大きい。同社の高機能樹脂製品事業の特長は、フッ素樹脂が半導体製造装置に組み込まれるまでの素材成型から樹脂加工、洗浄・検査といったサプライチェーン全体を視野に入れた事業展開にある。部材を供給するだけでなく、用途や工程に応じた設計・開発の段階から関与し、加工や周辺プロセスまで含む、一体となった安定供給及び付加価値提供を通じて顧客との信頼関係を構築している。2026年3月期は半導体市況の低迷により伸び悩んだが、今後の市況回復・拡大局面に備え、熊本イノベーションセンターに新棟を建設し、生産・開発能力を2倍以上に拡充した。また、寝屋川工場では、フッ素樹脂素材の生産を開始し、安定供給と収益性向上の両立を図ったほか、今後は洗浄・検査工程のエリア拡大も検討している。現在は熊本が主力拠点だが、熊本イノベーションセンターで確立した開発・生産・品質管理のノウハウを寝屋川工場や関係会社へ横展開することで全国各地での対応力を高め、エリア拡大による顧客需要の取り込みを図る。 また、高機能樹脂製品以外では、需要が拡大しているAI向けなど半導体の製造工程(後工程)において同社の機能フィルムが着実な伸びを見せている。半導体製造の後工程については、前工程の微細化の限界を背景に重要性が増している。特にAIやデータセンター、自動運転といった応用分野で先端パッケージへのシフトが進み、市場をけん引しており、同社の機能フィルムはまさにその成長領域を捉えている。具体的には、ダイシング工程テープ用の機能フィルムやパッケージ離型フィルム「Oidys(R)」などが半導体の製造工程に採用され、高度な要求性能への対応やコストパフォーマンスの高さが評価されている。 2. 研究開発活動からの成果 同社の6つのコア技術のうち、物質科学に属する電子線グラフト重合技術※を応用した金属イオン除去フィルター「KURANGRAFT」の増産体制を整えた。「KURANGRAFT」は半導体フォトレジスト工程で使用される薬液に含まれる微量金属イオンを除去・低減するフィルターであり、半導体製造市場において年商5億円を目指す計画である。また、他分野への展開も探る考えだ。 ※ 電子線グラフト重合技術は、(国研)量子科学技術研究開発機構の「高崎量子技術基盤研究所」と共同で開発を進めている、電子線(放射線)を照射して天然繊維などの高分子材料に新たな機能を付与する改質技術である。機能性コットン「NaTech」についても、原綿などの天然繊維に本技術を施すことで吸湿発熱、吸放湿、消臭などの機能を付加したものである。 ■業績見通し 2027年3月期は半導体市況が追い風、高機能樹脂製品が増収増益に寄与の見込み 1. 2027年3月期の業績見通し 2027年3月期の業績について同社は、売上高を前期比7.1%増の1,540億円、営業利益を同22.0%増の112億円、経常利益を同12.9%増の125億円、親会社株主に帰属する当期純利益を同1.0%増の130億円と増収増益を見込んでいる。各段階利益は2期ぶりに最高益を更新し、中期経営計画の目標達成に向けて「成長フェーズ」へとシフトする想定だ。 売上高は、「化成品事業」「繊維事業」「環境メカトロニクス事業」の主力3事業がそれぞれ伸長する見通しである。「化成品事業」は特に半導体市況の回復・拡大を背景とする高機能樹脂製品の伸びが増収に大きく寄与する。また、「繊維事業」はカジュアル分野での回復を、「環境メカトロニクス事業」では撹拌脱泡装置の回復やロボットビジョンの拡販などを見込んでいる。 利益面でも、収益性の高い高機能樹脂製品の伸びや「繊維事業」の構造改革効果(黒字回復)により大幅な増益を実現する。営業利益率も7.3%(前期は6.4%)に改善する見通しだ。 2. 弊社の見方 先行き不透明な中東情勢や通商問題などの影響には注意が必要であるものの、AIやデータセンター向けの旺盛な投資やメモリー価格急騰など好調な半導体市況の追い風に加え、「繊維事業」における構造改革効果、各所で高い評価を受け堅調に推移している製品群などを勘案すれば、同社業績予想は十分に合理性が高いと判断できる。注目すべきは、何と言っても高機能樹脂製品の伸びであり、半導体市況の回復・拡大に伴う需要をいかに取り込めるかがカギを握ると言えるだろう。その点では、これまで熊本イノベーションセンターにおける生産・開発体制を含む、サプライチェーン全体を強化してきた同社の拡大余地は大きい。市況の動向しだいでは上振れる可能性もあり、半導体市況の動向とともに四半期ごとの推移を見守りたい。また、計画に従って売却を進めている政策保有株式の売却益についても、最終損益の変動要因として認識しておく必要がある。株式市場の影響を受ける不確実性の高い性質のものであることから、同社予想においては保守的な前提を置いているようであるが、株式市場の動向や売却のタイミングによっては、前期同様、最終損益の上振れ要因になるとともに、キャッシュ・アロケーション(成長投資や自己株式取得など)にも影響を及ぼす可能性がある。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫) 《HN》 記事一覧 |