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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/08/01 18:07, 提供元: フィスコ タナベ Research Memo(7):中期経営計画の売上高目標を上方修正*18:07JST タナベ Research Memo(7):中期経営計画の売上高目標を上方修正■タナベコンサルティンググループ<9644>の今後の見通し 2. 中期経営計画 (1) 中期経営計画の進捗状況 2022年3月期からスタートした5ヶ年の中期経営計画(2021〜2025)「TCG Future Vision 2030」では、同社が従来から強みとしてきた経営戦略の策定(上流)支援をさらに強化し、加えて、現場での経営オペレーションの実装・実行(中流〜下流)支援におけるプロフェッショナルDXサービスをM&Aと開発で拡充していくことにより、企業経営を一気通貫で支援する世界で唯一無二の経営コンサルティングモデルを構築し、成長を加速する戦略を掲げている。 経営数値目標については、2021年3月期の売上高9,213百万円を基点に、当該時点の事業会社3社によるオーガニックグロースで売上高135億円(当初目標130億円)、M&A戦略の推進によるグループ企業の増加で売上高25億円(当初目標20億円)を上乗せし、最終年度となる2026年3月期の売上高目標を160億円と当初目標から10億円上方修正した。営業利益18億円、ROE10%については、従来目標を据え置いた。2025年3月期までの進捗状況としては、既述のとおりM&Aによりグループ化した子会社とのシナジーも顕在化し、順調に進んでいると弊社では評価している。グループ化した子会社とは、会社間で顧客の相互送客を行いながらチームコンサルティング契約の増加及びプロジェクト単価の上昇につなげており、グループ会社でも過去最高業績を更新するなど順調に推移している。 今後も中堅企業を中心に大企業から中規模企業に至るまで、顧客企業のDXや人的資本経営、M&A、グローバル戦略などのコンサルティングニーズを取り込むと同時に、行政/公共サービスの領域にも展開することで収益を拡大していく余地は大きいと弊社では見ている。同社では引き続きM&Aの検討を進めており、投資額としては10億円以上を想定している。 (2) 資本コストや株価を意識した経営の取り組みについて 同社は中期経営計画で「ROE10%」「時価総額250億円以上」の数値目標を掲げている。これら目標については、中期経営計画で掲げた業績目標を達成すること、並びに最適資本構成の実現(株主還元策の拡充)により達成する考えだ。ROEは、2025年3月期で9.5%まで上昇しており、2026年3月期の当期純利益目標1,070百万円を達成するとともに、総還元性向100%を実施すれは、「ROE10%」の達成は可能となる。これにより、株主資本コストを上回るエクイティスプレッドも拡大する見通しだ。 一方、「時価総額250億円」という目標については、今後の株価次第であり他力本願となるが、株価735円で時価総額250億円程度となる。6月13日終値で745円となっており、今後も同水準を維持向上し、目標を達成する考えだ。このため、新たに株主優待制度も導入した。今後も業績を計画どおり拡大していくのに加えて、中長期的な成長戦略の提示など同社の成長性に関して投資家がより一層理解を深められるような情報発信など積極的なIR・SR・PR活動が重要になると弊社では考えている。 (3) キャピタルアロケーションについて キャピタルアロケーションについては、創出するキャッシュを成長投資と株主還元にバランスよく分配していくことを基本方針としている。2025年3月期からの2期分のキャッシュ・インとして純利益20.86億円、減価償却費2.5億円、その他4億円の合計27.36億円を見込んでいるのに対して、キャッシュ・アウトとして配当金や自己株式取得等の株主還元に25億円、M&A投資で10億円以上を想定しており、2026年3月期末の株主資本は100億円(2024年3月期末107.61億円)、現預金等は70億円(同80.51億円)を想定している。 (4) サステナビリティ 同社では、ESGの観点から、持続可能な社会の実現及び同社のさらなる企業価値向上に取り組んでいる。サステナビリティに関する重要事項の適切なマネジメントを実施するためサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ定義・方針の策定からマテリアリティ(重要課題)の特定、重要項目ごとのKPIの設定等、その取り組みを推進している。 環境の観点からは、気候変動への対応については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示を行っており、複数のシナリオ(1.5℃及び4℃シナリオ)におけるリスクと機会の分析を行っている。また、温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みを推進し、スコープ1と2に関しては2030年までに100%削減することを目指している。これまで実施してきたオフィス照明のLED化やスマートDX投資によるペーパーレス化などをさらに推進するほか、使用電力については再生可能エネルギー由来の電力の割合を増やす。削減しきれない排出量については、非化石証書や再エネ由来J-クレジットを購入しオフセットすることを検討している。また、スコープ3に関しては、調達先への働きかけなどを通じて排出量の削減に取り組み、カーボンニュートラルの実現を目指す。 人的資本マネジメント(採用・育成・活躍・定着)については、DE&Iを推進すべく人的資本を高めるための人材採用・育成の取り組みを強化しているほか、多様な働き方や女性の活躍推進に向けた各種制度の拡充、エンゲージメント向上や健康経営などの取り組みについて目標を設定しながら推進している。特に、Surpassを子会社化したこともあり、男女比率が50:50とコンサルティングファームでは類を見ない水準となっている点は注目される。採用・育成については、業界に精通した実務経験者と新卒社員を積極的に採用し、リアルとデジタルのハイブリッドでプロフェッショナルコンサルタント※を育成する企業内大学「TCGアカデミー」を活用することで、育成期間の短縮を実現している。従来はチーフコンサルタントに育つまでに5年程度を要していたが、TCGアカデミーを導入以降は2〜3年に短縮し、早期戦力化している。また、定着化に向けてはコンサルタントの処遇向上(半期ベースで評価し給与に反映)やジョブ型コース別人事制度の導入、DX投資による働く環境の整備を進めており、3年平均の定着率は89.0%と業界平均を上回る水準を達成している。 ※ プロフェショナルコンサルタントの基準:チーフコンサルタントとして5社以上の担当実績があり、特定分野のプロジェクトリーダーとしてチームをけん引する能力を持つ人材。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《KM》 記事一覧 |