新刊『資産運用の強化書』の発売を記念して、角山智氏に伺いました。
バリュー投資家の角山氏が“資産運用”というテーマに着目したのはなぜなのか?――
Q.
角山さんというと、バリュー投資というイメージを持たれている人が多いと思います。でも、今回は“畑”が変わって資産運用。あえて、ここで「資産運用」について語ろうと思ったきっかけは何ですか?
A.
きっかけはというと、セミナーの講師をしているときにふと気づいたことがあったのです。こういう時期ですからセミナーにわざわざ足を運んでいただくお客さんも少ないのですが、その分、ひとりひとりの方との距離も近いというか、いろいろなお話を聞く機会も多くなりました。
ここでよく聞くのが、例えば2006年であれば、新興市場の数銘柄ですごく損をしたとか、ちょっと前であれば、BRICsやベトナムで損をしたという話なのです。
実際、セミナーにいらっしゃった方で10年間こつこつ貯めた預金を3カ月でなくしてしまったという話も聞きました。
Q. 3カ月ですか……。
A.
はい。ところで、そういう人たちって、どういう方々だと思います?
Q. 単純に考えると、博打好きというか、派手好きな人のような気がしますが、たぶん、そういう答えではないんですよね?
A.
そうなんです。普通のサラリーマンで、仕事に対してはすごくまじめな方だったりするのです。
皆さん、投資と聞きますと、いきなり個別銘柄の、しかも値動きの激しいところにいってしまうんですよね。普段はまじめな方でもいざ投資となるとリスクの高いところにいきなり向かって、そして火傷をして帰ってくる。これまで、そういう状況を見てきまして、「これは個別銘柄云々の話をする前に、投資の基本の部分をきちんと解説しておかないといけない」ということを痛感したわけです。
それに、今まで、アセット・アロケーション(資産配分)の本が出てはいるのですが、個人投資家の立場から自分の経験を踏まえて書いたものはなかったのです。そういうことが気になりましたので、私はもともとバリュー投資、個別銘柄の分析の本をずっと書いてきたのですが、やはり投資の基本なのでアセット・アロケーションについてもきっちりと自分の意見と経験を交えて1冊書いておこうと思って書いたのがこの本なのです。
Q. あえてお聞きしたいと思います。この本の特徴はどこにあるのでしょうか?
A.
アセット・アロケーションの本というのは、「債券、株式、不動産というアセット・クラスの配分を決めて、インデックスファンドで投資してくださいよ」という結論のものが多いと思うのですが、この本ではそういうところではなく、アセット・アロケーションという投資の基本を自分の投資の中にどう組み入れていくかがポイントになっています。
みなさんが「個別銘柄選びで知的なゲームしたいんだ」ということは私にもわかりますから否定はしません。ただし、個別銘柄選びだけではうまくいかないこともあるわけです。 というわけで、そういうもの(個別銘柄選び)と分散投資を組み合わせてみたらどうですかという「コア・サテライト戦略」を提案させてもらっています。
Q. コア・サテライト戦略というのは、簡単に言うと?
A. 株式投資については、大まかに言うと2つの考え方があります。ひとつは、効率市場仮説といいます。マーケットの株価というのはおおむね適正なので、個別銘柄を選ぶとか、投資のタイミングを選ぶということにおいて、マーケットに勝つことはできないよという考え方です。
もうひとつは、「いや、そんなことはないよ」という考え方です。マーケットは何らかのひずみを抱えているので、そういう非効率的なところをつついて、銘柄の選択なり、マーケットタイミングなりで市場平均を上回ることができるよというものです。バリュー投資もそちらの考え方ですね。
ただ、どちらが正しいかということで喧々諤々やっているのですけど、もともと投資には正解がないというところがありまして、いまだに結論が出てないんですよ。
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