3月末も近づき、3月決算銘柄の配当権利取りの動きも活発になりつつあります。
配当金と株価の関係から、株価の割安度を測る指標として、「配当利回り」が
あります。配当利回りは、次の計算式で表すことができます。
配当利回り=1株当たり(予想)配当金÷株価
例えば、1株当たり配当金が10円、株価が500円であれば、配当利回りは、
10円÷500円=2%となります。
銘柄によっては、この配当利回りが4%以上に達するようなものも多くありま
す。さらに、ここ最近の株価の下落により、全体的に配当利回りは高くなる傾
向です。
また、REITに至っては、配当利回りが10%近くに達しているものまで出現
する有様です。個人投資家の中には、「値上がり益より配当重視」で、配当利
回りの高い銘柄を狙って投資しようとする方も多いことでしょう。しかしなが
ら、配当利回りが高いことに、逆に疑問をもっていただきたいのです。
1株あたり配当金に変化がなければ、株価が下がるほど配当利回りが高くなり
ます。配当利回りが高くなれば、それだけ配当への魅力が高まりますから、配
当利回りが一定の水準にまで高まったところ、例えば2%程度の水準で株価は
下げ止まっても不思議ではないのです。
日本の株式市場の全体的な下落により、今は株式の配当利回りが10年物国債の
利回りより高い「逆転現象」が起きています。しかし、これはいわば「異常事
態」で、過去においては株式の配当利回りより、国債の利回りの方が高いこと
が一般的です。
ですから、1.4%程度の10年物国債の利回りよりはるかに高い4%、5%とい
う配当利回りになっている銘柄は、「たくさん配当がもらえておトク」と思う
のではなく、逆に「何かある」と感じなければなりません。
配当利回りが異様に高い場合、その最大の理由は、「実際の配当金が予想値よ
り減額される可能性がある」と多くの投資家が思っていることにあります。
例えば、大豊建設は、3月7日に、配当金を当初予定の5円から2円に減配する
と発表しました。
3月7日終値127円で配当利回りを計算すると、当初予定の5円配当では3.94%
だった配当利回りは、減配後の2円配当では1.57%まで低下してしまいます。
このように、業績が不安定な銘柄を、配当利回りの高さだけで投資対象とする
と、業績悪化などによる配当減額によって、期待していた配当利回りを得るこ
とができないことが往々にしてあります。
さらに業績悪化が進めば、配当が減少するだけでなく、株価も下落して、ダブ
ルパンチのダメージを受けることにもなりかねません。
もし、配当に重点をおいた投資をするのであれば、できるだけ業績の安定して
いる銘柄、そして過去の配当金の推移から配当金の減額の可能性が低いと思わ
れる銘柄を探すようにしてください。そうした銘柄の配当利回りが4%、5%
であることはまずなく、良くて2%台でしょう。でも、それが正常な「高配当
銘柄」の配当利回りの水準なのです。それより高い配当利回りを望むのなら、
配当減額や株価の大幅な下落というリスクを覚悟しなければなりません。
配当利回りは、今期の予想配当金を、将来にわたって受け取り続ける前提で算
出された指標です。業績の変動が大きく、毎年のように配当金が上下に変動す
るような銘柄の配当利回りの信憑性は低いものと心得なければなりません。
くれぐれも、表面上の配当利回りを過信しないように注意してください。