鉄鋼、商社、銀行、証券など、株式市場では、多くの業種で、同じ業種に複数
の銘柄が上場しています。
このようなとき、筆者であれば、業界トップより、2番手、3番手に投資しま
す。その理由は、業界トップより2番手、3番手銘柄の方が、株価の変動率が
大きいからです。
(筆者注:本原稿における業界トップおよび2番手以降の位置づけは、主にバ
ブル崩壊後の株価の安値が高いものから順に形式的に行っているものであり、
実際の業界内での順位とは異なる可能性があります)
例えば、鉄鋼セクターの銘柄で見てみましょう。業界トップの新日本製鉄は、
バブル崩壊後の安値(2002年11月)が119円でした。同様に、業界3番手グル
ープの住友金属工業、神戸製鋼所はそれぞれ36円、42円でした(業界2番手の
JFEホールディングスはバブル崩壊後から現在までの連続した株価の推移を
追うことができませんので検討対象から除いています)。一方、その後の高値
をみますと、新日鉄は964円、住友金属工業は771円、神戸製鋼所は521円です。
このことから、安値から高値まで何倍になったかを調べますと、新日鉄は8.1倍
であるのに対し、神戸製鋼所は12.4倍、住友金属工業に至っては21.4倍にもな
っているのです。
また、大手銀行株でも同じような傾向にあります。三菱東京UFJフィナンシ
ャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグル
ープの3つを比較しますと、安値がそれぞれ351,000円、162,000円、58,300円、
高値がそれぞれ1,950,000円、1,370,000円、1,030,000円です。安値と高値を
比べると、三菱東京UFJは5.6倍、三井住友は8.5倍、みずほはなんと17.7倍
にまで上昇しています。
業界トップより2番手以降の銘柄の方が株価の変動が大きくなるのは、以下の
ような理由が主に考えられます。
・業界2番手以降の会社は業界トップより相対的に経営基盤が安定していない
ことが多いため、業績のブレが大きくなる。
・業界2番手以降の会社の方が業界トップより財務体質が劣ることが多いため、
特に不況で信用不安が高まると投資家が敬遠する傾向となり株価が大きく下が
りやすい。
・投資信託など、どのような局面でも常に日本株式に投資せざるを得ない資金
は、株価下落局面や信用不安が高まった局面では、業界トップの銘柄に資金を
集中させる傾向がある。
このように、同じ業種であれば、2番手以降の銘柄に投資したほうが、株価上
昇時にはより大きく儲けることができる可能性が高まります。
さらに、例えば商船三井、川崎汽船と日本郵船のように、業界2番手、3番手
の会社であっても、業績を伸ばして、業界トップの企業の株価を抜くこともあ
ります。業界2番手以降の銘柄には、「業績いかんでは株価の大幅上昇も期待
できる」という夢とロマンも兼ね備えているのです。
逆に、下落相場では、業界下位になればなるほど株価の下落率も高い傾向にあ
りますから、逃げ遅れれば大きな損失を出しかねません。
株価下落時にはすぐに損切りなどしてうまく立ち回れる自信のある人であれば、
業界2番手以降の銘柄を積極的に狙うのが面白いでしょう。一方、あまり株価
が大きく変動するのはできるだけ避けたい、という人は、業界トップの銘柄へ
の投資が向いているといえます。(ただし、投資結果についてはくれぐれも自
己判断、自己責任の上投資してください)