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市場間分析入門

ジョン・J・マーフィー 長尾慎太郎 関本博英 パンローリング

先物市場のテクニカル分析で有名なジョン J.マーフィー氏の本である。

1980年代から2003年までの商品、債券、株式の3つの市場についてのいかに相互に影響しあっているかが解説されている。株式のトレードを主に行っている立場からすると、株式をトレードするにあたっても他の市場を見ておくことの大切さを学んだ。また短期売買するときにもこうした大局観を頭に入れておくのは有利なことではないかと思う。

本書では興味深い分析が数多く語られている。なかでも1929年の世界大恐慌のときも1987年のブラックマンデーのときも債券はいち早く下落しており、株式はその動きに逆らって逆行高していたということは今まで知らなかったし、とても興味深い。そのほかにも、原油と原油株、日本株と米国債など様々な市場の関係、株式投資するときのセクターローテーションの重要性などについても指摘されている。

また著者はこの本が発売される2004年時点で、今後は株式の時代から商品の時代へと移行してくるので今後10年は株式に投資してもリターンはすくないだろうと述べているが、現状まったくその通りの展開になっている。

本書では実際にどのタイミングで投資すればいいのかといった必勝法のようなものは何も書かれていない。また延々と市場間の流れについてが語られているので途中で退屈になる部分もある。

しかしながらそうした点を差し引いても読み進めるうちにテクニカル分析でもファンダメンタル分析でもない市場間分析という新しい視点を得られるという意味で貴重な一冊だと思う。

ゆうたろう(30代・主に株のトレーダー)


インターマーケットの分析は今や常識となっているだけでなく、株式市場におけるセクタートレーディングは今後より重要になるだろうと強調されている。各マーケットの相互関係から、現時点が置かれている環境が景気の収縮期なのか拡大初期なのかといったことを捉えることで、その状況に対する株式、債券、商品、金利、為替、政策などの反応が相応のものか否かを判断し、それを利用できるように備えておくことは確かに大切であり、既に必須事項なのかもしれない。だが、本書に示されてるような具体的な方法を知らなければ、一個人ですべてを相対的に分析し、フォローし続けるのは容易ではないだろう。

ごく最近のアジア通貨危機やイラク戦争などのニュースと、そのときの各マーケット動向の詳述によって、繰り返しインターマーケット分析とは何かということが解説されており、実際には複雑に影響しあっての結果であろう、グローバルなマーケットにおける相関関係が本当にすんなりと理解でき、点と点が線で結ばれて形が見えてくるような明快さを感じる。それには歴史をたどって長期間分析することが欠かせないのだが、歴史が繰り返すか繰り返さないかはその背景にあり、そこを比較分析することでより正確に予測できるという点はもっともだと思える。

だが、著者もこの原則は決して静的なものではないと述べているように、マーケットの相互関係がいつ顕在化し、それをどのように投資に利用するのかはシステマティックにはいかないようだ。 相関関係に注目しているのに実際の相関係数などには触れず、比較も相対的なレシオ分析に基づくチャートのトレンドラインを見るというのは、あくまで大局を捉えることに専念するためなのだろうか。

特に真の分散投資を図るという意味では、大いに一読の価値があった。現在どの市場やセクターが有利か不利かが分かれば、機動的なアセットアロケーションの構築が可能となるだけでなく、保守的にもできるしローリスク・ハイリターンも望めるというのだ。さらに内容は不動産関連にまで及んでおり、”投資”という視野は広いに越したことはないと理解できる。学ぶべきこともまだまだ多いが、その成果には充分期待させられた。

また、従来のテクニカル分析だけでなく、このインターマーケット分析を付け加えることで、その視野をさらに広げるとともに、市場間をすばやく動ける目も養っていかなければ、これからの時代にどんどん取り残されてしまうとういう焦燥感を幾度も感じた。現在も進行中の新しいマーケット環境に適用していくには、これまでとは異なる投資の考え方、分析ツール、タイムスパンを持たなければならないのだ。アメリカでは数年前から常識とされている貴重な現実を、まずは知っておくべきだろう。

(20代 まっちゃ 脱サラ志望のSE)


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