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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2026/06/12 11:07, 提供元: フィスコ

筑波精工 Research Memo(7):EV車の課題は「長航続距離」

*11:07JST 筑波精工 Research Memo(7):EV車の課題は「長航続距離」
■筑波精工<6596>の中長期の展望

1. EV車の今後の課題(航続距離)と解決策
過去数年間、中国と欧米を中心に自動車のEV化は加速度的に進んだが、足元ではその伸び率が鈍化している。この背景として指摘される主要な課題の一つが「航続距離」、すなわち1回の充電で走行可能な距離の制約である。特に冬季においては、車内暖房による電力消費が大幅に増大し、その結果充電ステーションにおける待機時間の増大や長蛇の列といった利便性の欠如が顕在化しており、消費者の「EV離れ」を誘発する一因となっている。

(1) EV車の長航続距離化にはインバータの発熱減が必須
EV車(大衆車)の欠点の1つとして、航続距離が短いことが挙げられているが、長距離化走行を実現するためには、主に2つの点の改善が必要である。1つ目はバッテリー(蓄電池)の大容量化であり、これはガソリン車で言えば燃料タンクを大きくすることに相当する。2つ目は、電気の変換効率を上げることで、ガソリン車で言えば燃費性能を改善することになる。変換効率を左右する要因は、インバータの発熱にある。EV車では、バッテリーのDC電力をACに変換しモーターを回すが、この役割を果たすのがインバータで、変換時の発熱が電力損失を生んでいる。今後EV車の航続距離を伸ばすためには、インバータでの電力損失を極力抑えることが必須条件となる。

(2) 2つの解決策:SiC基板か極薄Si基板
同社によれば、このインバータでの熱損失を抑える方法は、現時点においては主に2つあるとのこと。1つはSiC(シリコンカーバイド)基板を使うことだが、SiC基板は量的な供給が限られていることから非常に高額であり、限られた一部の高級車にのみ搭載できる。一般大衆車への搭載はコスト面から難しい。一方でSi基板(通常のシリコンウエハ)は安価で大量供給が可能だが、熱損失を抑えるためには厚みを80μm厚(可能なら60μm厚)以下にする必要がある。しかし量産ラインにおいては80μm厚以下のウエハの取り扱いが非常に難しく、通常の「接着剤方式」が使えないため、同社の「静電チャック方式」が必要となる。

注:上記は取材に基づいた同社の説明による。

2. 潜在市場
上述のような事業環境を鑑みると、同社の将来性には期待すべき側面があるものの、ウエハの薄型化には克服すべき課題や障壁も依然として多い。同社は当初、EV向けウエハの薄型化進展を2024年3月期以降と見込んでいたが、実際は2〜3年程度の遅れが生じている状況にある。こうした状況を踏まえると、同社の業績が本格的な回復および拡大基調に転じるのは、2027年3月期以降になるものと予想される。

今後の潜在市場の規模について、同社によれば、従来、薄型IGBT生産の主流は6インチウエハであったが、2023年秋からは8インチウエハで80μが本格稼働しており、さらに一部では12インチウエハへの移行が始まりつつある。12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要については、遅くとも2028年3月期に7,000枚/年になると見ているようだ。

「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して同社は「12インチウエハ用で1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを150円とすると、2028年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×150=3,150百万円※となる可能性がある。

※ これらの数字は弊社推測によるもので、同社から正式に発表された数字ではない。

同社によれば、既に12インチ月産15万枚を準備している顧客がいるとのことで、事実2024年3月期には12インチ量産用の「自動機」を販売した。同社では12インチの保持材について、今のところ「Supporter」に対して競合する製品はないと見ている。今後は8インチでの同社製品の採用が増加するとともに、12インチへの展開も注視する必要がある。

3. もう1つの潜在市場(MOSFET用)とIGBTの広がり
同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう1つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、自動車用と携帯電話用バッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては高速(短時間)での充電が求められている。そのためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、デバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。その生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となるが、これに対応できるのが同社の「Supporter」である。

同社ではMOSFET用としての「Supporter」の需要も今後増えていくと見ており、IGBT用と並び注目したい市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、将来の売上高は年間200〜300百万円に上る可能性があると弊社では見ている。

また最近では、薄型IGBT市場が広がってきている点にも注目したい。現在、最も需要が期待されているのがEVであるのは言うまでもないが、近年では風力発電用、家電用にも需要が広がっている。

4. AI半導体向け
今後の成長が期待される市場はAI半導体向け、より厳密には「超微細化の半導体向け」の領域である。AI半導体などでは超微細化が進んでいるが、現状ではプロセス装置や検査装置内のウエハ吸着固定による極微細な接触傷が歩留まりを大きく低下させており、これを改善するために、同社の「Supporter」(Carrier)の採用が検討されている。既に海外大手のファウンドリ向けにテストライン用の受注があったが、今後は検査装置メーカーでのテストを経て量産ラインに採用されれば大きな受注が期待できる。EV向けに加えて、今後はAI半導体向けも注視したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)


《HN》

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