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『生涯現役の株式トレード技術 【生涯現役のための海図編】』 著者
優利加

「今しかできない方法」ではなく、70歳、80歳になったときにもできる方法を探して巡りついた――新刊『生涯現役の株式トレード技術 【生涯現役のための海図編】』の執筆を終えた優利加氏にお話を伺いました。


Q. 先生の手法はわかりやすいので、初心者の個人投資家が著書を手に取ることも多いと思います。初心者がトレードをする場合にパターントレードってどうなんでしょう?

A. 結局トレードには「買う」か「売る」か「休む」、この3つしかない。じゃあ買う場合はどういう型のときに買うか? 売る場合は? その場合確度の高い型は? 建玉法は? そこまで全部決まれば、過去データからの検証もできます。初めからそうしようと考えていたわけではありませんが、私の手法はフローチャートになっていますから、理解しやすいと思うんですよ。ロジックが直線的に進んでいくので、ぐるぐる回って「結局何なの?」と迷路にはまり込まずに、必ずなんらかの結論にたどりつくようになっています。

けれど、私の手法はパターンといえばそうも見えますが、始めからこうやろうと思っていたわけではなく大局を考えていったらこういうやり方になっただけです。


Q. パターンを探そうとしたわけじゃなくて、結果的にそうなった?

A. そうです。戦略を考えて、戦術を考えて、戦闘法を考えて、気がついてみたら「ああ、すべてに型があるんだ」と。


Q. 実践編のセミナーDVDでご説明されていた酒田五法なんかもひとつの型だと思うのですが?

A. そうですね。最初のころは酒田五法を中心にトレードしていましたが、10本新値で下がったからといってまたすぐに反発するかと言ったら、そんなことはない。もちろんほんの少し止まったり戻したりはしますが、期待するような大きな反発はほとんどないんです。結局いちばん大事なのは中期のトレンド。要するに、その銘柄が中期的に上昇トレンドを描いるか、下降トレンドを描いているか。そしてその大きな枠のなかで小さく自律リズムで動くわけです。その自律リズムの限界がどのへんかをみるのが酒田五法であり、型ということです。


Q. あくまで型は参考程度ということですか?

A. トレンドが起こるのには、理由があるんです。数カ月の間上がったり下がったりという中期的なトレンドは、われわれが知らないだけで、きちんとそうなる理由があるんです。それはたとえばファンダメンタルズだとか、今回の新刊でお話しするバリュードライバーでみるわけです。


Q. そのバリュードライバーの概念が詳説されている新刊ですが、どのような内容ですか?

A. セミナーや講演会での内容が中心です。4回のセミナーでお話したことを再構成したものが8割。バリュードライバーという考え方、言葉自体を出したのは初めてです。


Q. 先生の戦略も日々ヒントがあって変化していると思いますが、そのパターンやヒントを発見する方法・コツを教えていただけますか?

A. キーワードで毎日何かひらめくんです。そしてこう考えたらどうだろうと思ってチャートを眺めて、「よさそうだ」と思えば、検証します。検証して有効率が高ければ、ルールのひとつに加えるし、結果が悪ければ「このルールはどこを修正すればいいのか?」と考えます。


Q. 検証の期間は一定のものではなく、ひらめいたアイデアによって変わるのでしょうか?

A. いまは仕掛けから手仕舞いまでだいたい1カ月で検証しています。スイングの検証だとそのくらいがちょうどいいでしょう。最長で1カ月、3週間くらいでだいたいはトレイリングストップにひっかかります。短いときは2、3日で終わってしまいます。

それでだいたいどの程度の利幅がとれるか、その確率はどのくらいかということを、仕掛けに入った銘柄全部で検証しています。だから確実なデータが取れるんですよね。そうするとたとえば『押し目反発型』を明確に数値で定義することができます。


Q. 前回のセミナーでもかなりの時間をトレイリングストップに割いていましたが。

A. 結局、どんなにいい分析結果でも先のことを確実には読めません。読めない部分を何で補うかといったら、建玉法なんです。だから「ここを割り込んだら逃げよう」というポイントがあるわけです。

買いの場合は、チャートを見て、ここを超えたら買いたいというのがあるわけです。だからそこに逆指値をして、超えたら自動的に買うようにしておきます。すべては私が70歳、80歳になったときにもできる方法ということで考えているのです。


Q. 生涯現役の。

A. そうそう。「今ならできるけど、年を取ったらできない」という方法じゃ、またそのときに考えなくてはならないから今のうちに完成させておこうというのがそもそもの発想ですね。


Q. 成功されている投資家には、みんなに自分の手法を教えてしまうと使えなくなるから、教えないという人は多いと思いますが?

A. そんな単純なものじゃないです。たとえばトヨタの生産方式というのは世界中に知れ渡っていますが、トヨタを超える会社はなかなかありませんよね。トヨタとずっと戦略的に提携関係にあったGMでさえもうトヨタには抜かれています。それどころかどんどん離されている。それがいい例ですよね。

理屈でわかっていても、最終的には技能が必要になってくるんです。職人の技というのは本を読めばできるかといったら、できないですよ。


Q. 知っているか知らないかで確度がかなり違う方法っていうのはあると思いますが、なぜここまで明かしてしまうのでしょう?

A. ひとつは「何か残したい」という思いがあるんでしょう、きっと。それが自分が亡くなったあとにでも残って子孫に伝えることができたり、それが間接的に誰かの役に立てば、それはいいことだと思います。


Q. 最後に門下生やファンの方にアドバイスなどお願いします。

A. 「戦略的な考え方が一番大事」ということです。「MACDが」「一目均衡表が」とか、小手先のテクニックばかりに気を取られている人が多いようですが、戦略的な部分が最も大事なんです。日本の株全体がどういう方向に動いているか。そのなかで、それと整合性のあるような方向でポジションを取ることです。相場全体が下げているのに買いで入ると、よっぽどうまいタイミングでないと早すぎて買った後どんどん下げていく。そしてついていけなくなって投げたときが底になる……というのがだいたいのパターンです。

そういうところであえて流れに逆らうのではなくて、相場全体が下げていると思えば、逆らうことなく空売りすればいい。1週間2週間後の反転を待って買い下がるよりも素直に売ればいい。


Q. では、こういうパターンでこういう指標で、こういうサインが出たら買うというわけではなく?

A. それは最後の振り分けの部分でやりますが、最初にみるのは、大きな潮流が今上げなのか下げなのか? 相場全体の勢いが上がっていても、そのときから既にトレンドが下がっている銘柄って何百とあるんです。その銘柄が、相場全体が下がったときにどうなったか? 相場がいきなり下がったら「上がる」と思うか「もっと下がる」と思うか。

逆に全体が下がっていても、あまり下げない銘柄もあります。それが今回は造船で、業種全体です。株価は下げているのに造船の中期トレンドは上向きのままでした。そして相場全体の嵐が過ぎ去って、底を打ったときにどうなったか? イメージできますよね。もうみんな直近高値を抜けていますよ。


Q. 相場全体と、業種などの小さな枠でみるということですか?

A. 銘柄をみるのは一番最後です。最初に相場、次に業種、それから銘柄。本を読んでいただければ今の話はすっきりとわかると思いますよ(笑)。


Q. ありがとうございました。


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今回インタビューに応じていただいたのは…
優利加 先生
Eureka

外資系金融機関に17年勤務し、在職中、英国にてMBAを取得。2000年10月に退職し、株式トレードを行う傍ら、厚生年金基金のアドバイザーを行ったり、株式投資雑誌への寄稿を行う。2003年8月から個人投資家に株式トレード技術の指導をする「優利加トレード塾」、略称「優利加塾」を開講。百数人の塾生を指導している。モットーは「自他共楽」と生涯現役の株式トレード。

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