| 作品紹介
鈴木三重吉は日本の児童文化運動の父として知られています。彼は、政府が主導する唱歌や説話の質に不満を持ち、子供の感性を育むためには、本当に良い作品を届けなければならないという哲学のもとで、童話と童謡の雑誌「赤い鳥」を創刊しました。その創刊号には、芥川龍之介、有島武郎、泉鏡花、北原白秋らが賛同し、後には菊池寛や、谷崎潤一郎らも作品を寄稿しました。また、「赤い鳥」には多くの作家、作詞家、作曲家、画家が賛同し、参加したのみならず、彼らが世に出るきっかけとなりました。
 三重吉自身も創作童話のみならず、世界各国の物語を児童向けの童話として、沢山の作品を発表しています。
 このオーディオブックは、鈴木三重吉がお子様に対しても真剣に一人の人間として向き合って、千差万別の人間模様を描いた童話が収められたものです。是非親子で一緒に触れてみてはいかがでしょうか?
 
 「古事記物語」
 これは日本の国のはじまりの物語です。
 世界ができたそもそものはじめ。まず天と地とができあがりますと、それといっしょにわれわれ日本人のいちばんご先祖の、天御中主神という神さまが、天の上の高天原というところへ生まれました。まだ天と地の境がはっきりしない中、次々と神様が生まれた後で、伊弉諾神と伊弉冉神という男神女神が生まれると、天御中主神は二人を呼んで、
 「日本の国を作りあげよ」
 と命じて立派な一振りの鉾を授けました。二人はその鉾の力で日本列島を生み出し、日本の国にもたくさんの神様を生みました。ところが、伊弉冉神は最後に火の神を生んだ際に大やけどをしてしまい、それが元で命を落としてしまったのです。
 伊弉諾神は嘆き悲しんで、妻の死の原因になった火の神を斬り殺しました。しかし、それで気持ちが収まるはずもなく、とうとう妻に会いたいあまりに死者の国である黄泉の国へ旅立ったのでした……
 
 「魔法の魚」
 昔あるところに年を取った、欲張りな王様がいました。
 ある日御殿に現れたおばあさんは、それを食べるとこの世のすべての生き物のことばがわかる不思議な魚を、王様に贈りました。王様は他の者に食べさせると、損をするというおばあさんの言葉を信じて、
 「他の者には一切れもやってはいけない。お前だって盗んで食べると切り殺すぞ」
 と厳しく言い渡して、家来に魚を料理させました。ところが家来は、魚をフライにして、出来栄えを見るために味見をしてしまったのです。途端に家来の耳には、蠅や空を行く雁たちの話す声が聞こえてきたのです。家来には王様がこの魚を独り占めしようとした訳がわかりました。そして、これは王様にばれてしまったら大変だと思ったのです。
 ところが、王様と馬で遠乗りに出かけた時、家来はうっかり馬たちの話す言葉を聞いて笑ってしまい、王様は家来が魔法の魚を食べたことに勘付いてしまうのでした……
 
 収録作品
古事記物語上巻・女神の死_一
 ・女神の死_二
 ・女神の死_三
 ・天の岩屋_一
 ・天の岩屋_二
 ・八俣の大蛇_一
 ・むかでの室、へびの室_一
 ・むかでの室、へびの室_二
 ・むかでの室、へびの室_三
 ・むかでの室、へびの室_四
 ・きじのお使い_一
 ・きじのお使い_二
 ・笠沙のお宮_一
 ・笠沙のお宮_二
 ・満潮の玉、干潮の玉_一
 ・満潮の玉、干潮の玉_二
 ・満潮の玉、干潮の玉_三
 ・八咫烏_一
 ・八咫烏_二
 ・八咫烏_三
 ・赤い盾、黒い盾_一
 ・赤い盾、黒い盾_二
 ・おしの皇子_一
 ・おしの皇子_二
 ・おしの皇子_三
 ・おしの皇子_四
 
 古事記物語下巻
 ・白い鳥_一
 ・白い鳥_二
 ・白い鳥_三
 ・白い鳥_四
 ・白い鳥_五
 ・朝鮮征伐_一
 ・朝鮮征伐_二
 ・朝鮮征伐_三
 ・朝鮮征伐_四
 ・赤い玉_一
 ・赤い玉_二
 ・宇治の渡し_一
 ・宇治の渡し_二
 ・宇治の渡し_三
 ・宇治の渡し_四
 ・宇治の渡し_五
 ・難波のお宮_一
 ・難波のお宮_二
 ・難波のお宮_三
 ・難波のお宮_四
 ・難波のお宮_五
 ・大鈴小鈴_一
 ・大鈴小鈴_二
 ・大鈴小鈴_三
 ・大鈴小鈴_四
 ・大鈴小鈴_五
 ・大鈴小鈴_六
 ・しかの群、ししの群_一
 ・しかの群、ししの群_二
 ・しかの群、ししの群_三
 ・しかの群、ししの群_四
 ・とんぼのお歌_一
 ・とんぼのお歌_二
 ・とんぼのお歌_三
 ・とんぼのお歌_四
 ・とんぼのお歌_五
 ・うし飼、うま飼_一
 ・うし飼、うま飼_二
 ・うし飼、うま飼_三
 ・うし飼、うま飼_四
 
 ねずみのお馬
 
 おじいさんとお馬
 
 星の女
 
 鳥の言葉、けものの言葉
 
 うさぎ
 
 魔法の魚
 
 デイモンとピシアス
 
 ディーサとモティ
 
 石の馬
 
 豆のはしご
 
 
 鈴木三重吉(すずき・みえきち)
小説家・童話作家。1882年、広島の生まれ。東京帝国大学において夏目漱石に師事した後、その門下となる。短編小説「千鳥」を「ホトトギス」に発表して認められ、作家としてデビューした。
 その後も浪漫的・抒情的な作品を書き注目を受けたが,しだいに童話への関心を深め1916年童話集「湖水の女」を出し、1918年、児童雑誌「赤い鳥」を創刊。坪田譲治、新美南吉らの童話作家を育てた。
 
 代表作には小説「小鳥の巣」「桑の実」「世界童話集」など。
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