サバイバルで最も重要な要素の1つが、恐怖を払いのけてくれる知識を充実させることである。そしてウォール街では、幸運は用意された心のみに宿るのだ。本書は学習のプロセスを早め、大学やMBA(経営学修士)の学生たちが就職面接で投資アイデアの提案をするにせよ、銘柄選択コンテストに参加するにせよ、成功するために必要となるエッジ(優位性)をもたらしてくれる。
また、ソンキンとジョンソンは考え方が柔軟で、経験豊富な投資のプロたちを居心地の良い場所から引っ張りだし、よく知られたコンセプトを考え直すよう挑発もしている。最も成功しているベテランでさえ、後輩のファンドマネジャーに出し抜かれることを心配しなければならない業界において、本書は最高投資責任者や調査部長に新しいツールを提供し、彼らの分析プロセスを引き締め、組織内のコミュニケーションと効率性を劇的な改善を可能にしてくれるだろう。
本書は、ファンドマネジャー、アナリスト、銀行家、企業経営者、セールスパーソン、学生たち、そして個人投資家に自らのパフォーマンスをより早く改善させる方法を伝える唯一の書である。つまり、本書は株式市場で勝つためには欠かせない基本ガイドである。
ポール・ジョンソン(Paul Johnson)
ニクサ・インベストメント・アドバイザーズの経営者。ペンシルベニア大学ウォートン校でファイナンスのエグゼクティブMBAを修得。コロンビア・ビジネススクールとガベリ・スクール・オブ・ビジネス、フォーダム大学の大学院で証券分析とバリュー投資の講義を40学期にわたり担当。ハワード・マークスの『投資で一番大切な20の教え』(日本経済新聞出版)の脚注を担当、『ゴリラゲーム』(講談社)の共著者である。
「投資リサーチについて思慮深く語ることはアートと科学の双方の要素が必要であるが、ソンキンとジョンソンは本書においてそれを見事にやってのけた」――ジョン・ミハルジェビック(『バリュー投資アイデアマニュアル』[パンローリング]の著者)
「銘柄提案は魔術のようなものだ。入念な調査に始まり、冷徹かつ論理的な分析を行い、明確な判断を下す。それが魅惑的なものへと変わるのだ。ソンキンとジョンソンはこの秘術を見事に説明している。彼らは金融界での成功の扉を開く、今までにない秘密を本書に組み込んだのだ。完璧な銘柄を売り込むことが、職を得て、生きながらえるうえで最も大切なことである」――ジェフ・グラム(バンデラ・パートナーズのファンドマネジャー兼『ディア・チェアマン[Dear Chairman]』の著者)
第1部 完璧な銘柄
第1章 資産の評価方法
第2章 事業を評価する方法
第3章 競争優位と成長の価値の評価方法
第4章 株式の本源的価値の考え方
第5章 市場の効率性についての考え方
第6章 大衆の知恵に対する考え方
第7章 行動ファイナンスの考え方
第8章 リサーチによる付加価値の付け方
第9章 リスクの評価方法
第2部 完璧な銘柄提案
第10章 銘柄の選び方
第11章 メッセージの内容の組み立て方
第12章 メッセージの伝え方
謝辞
アーティストたちへの謝辞
著者について
また後半は、アナリストがファンドマネジャーに銘柄提案を行う際の手引きとなっている。企業価値評価の技能にとどまらず、投資にかかる知識や技術を自分の経験のみに依拠して高めていくのは容易なことではなく、それには批判や指摘を含む他者とのコミュニケーションを通じて自己の所見を洗練させ表出化すること、そしてそれを実践した結果のフィードバックを受けることが不可欠である。
ゆえにまともな資産運用組織であれば、個々人の能力や限定合理性の制約を超えるための方略として、業務の専門化や分業の推進と並行して、プラトン哲学に準じた対話の知を促進する仕組みや場を有している(もし「ウチの会社にはそんなものはない」という機関投資家の方がいれば、その組織に今後もとどまるべきかどうかを再考したほうが良いだろう)。
一方で、他者とのインタラクティブな連繋など自分には関係ないと思う個人投資家の方もいるかもしれない。だが、実はこれこそがプロとアマチュアとの分水嶺なのである。個人投資家が成功を収めるか否かを分ける因子について調べた学術研究によれば、学歴や性別や出自や年齢といった属性は投資活動の成否にはほとんど関係がなかった。しかし、違いを有意に説明する因子が2つだけ発見された。そのなかの1つは自己の投資アイデアが第三者の目で冷静に客観視される機会があるかどうかであった。
よって、個人投資家が投資で成功しようと望むならば、社会的に孤立すべきではなく、自分の考えをまとめ、それを信頼できるだれかに評価してもらう場を何らかの形で持つべきなのである。本書の後半で説かれているように、企業価値評価の分析結果を体系的に整理し、他者に如才なく説明することはその第一歩である。(続きを読む)
このピカソの言葉は本書に対するわれわれの感情を表現している、つまり本書を認めるためにかかった3年の間、われわれの考えは大きく変わったということだ。辛抱強い編集者のビル・ファルーンに三度の締め切りを守れない理由を説明するにあたり、われわれはこう言って彼を安心させた――「でも当初約束したものとまったく違う、はるかに優れた本になるよ」と。
やっと本が出来上がり、作品が「野に放たれた」ときに何が起こるか楽しみにしている。ピカソの絵と同じように、われわれの本はそこで提示されたコンセプトが評価・検証され、ある者には取り入れられ、またある者には反論されることで、独自の命を持つようになるのだ。われわれのアイデアのなかには、読者がそれに依拠したり、または却下したり、創造的破壊(「厳密ではない科学……葬儀の連続である」とはポール・サミュエルソンの言葉である)のプロセスを通して置き換えられたりするなかで、さまざまに変化するものがあることは分かっている。われわれはそのいずれをも歓迎する。証券分析とファンダメンタルズに基づく投資の分野において人々を教育し、その能力を高めることがわれわれの望みである。ピカソの絵と同様に、本書が読む人々を通して長く生き残れることを願っているのだ。
ソンキンは好んでこう口にする。「共著者として名前が載るのと、自分で本を書くことはまるで違う」。われわれ2人は過去に共著者として名前が載ったことはあるが、本書はわれわれが実際に書いた最初の本である。2人とも本を書きたいと何年も考えていたのだが、日々の暮らしに忙殺され、その考えを追及する時間を見つけることができなかった。2013年の夏、ソンキンは友人のアレハンドラに大きな刺激を受け、ついに本を書くことを決意したのだ。
人生における多くの出来事と同じように、このコラボが生まれたのは偶然であった。2013年10月4日金曜日、ニューヨーク市のピエール・ホテルで開催された第23回グレアム・ドッド年次朝食会の閉会後、ソンキンとジョンソンの会話のなかで、ソンキンは本を書く計画なのだと語った。ジョンソンは「題名はどうなるの」と尋ねた。「ザ・パーフェクト・ピッチ(The Perfect Pitch)」とソンキンが答えると、ジョンソンはこう返した。「おかしなもんだね、僕はザ・パーフェクト・インベストメント(The Perfect Investment)という本を書こうと常々考えていたんだ」。その日の午後も遅い時間にオフィスに戻ったあと、互いにeメールをやり取りするようになり、われわれは自分たちの本が補完的であることにすぐに気づいた。ソンキンは投資アイデアを取り上げてもらうために銘柄提案が担う役割に興味があったのだが、ジョンソンは提案すべき適切なアイデアを見つけることに重点を置いていたのだ。2つの本は同じコインの裏表であることがますます鮮明になり、われわれが協力して1つの本を書き上げることが明らかになった。 (続きを読む)
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