“ジョージ・ソロス”。
世界で最も著名な投機家であり、ヘッジファンドマネジャーである。
1969年、ジム・ロジャーズとともに設立したヘッジファンドは、現在の「クォンタムファンド」となり、同年12月31日からの10年間で3365%の成績を叩き出した。同期間、アメリカ経済は低迷しており、株価指数(S&P500)はたった47%の上昇率でしかなかった(ロバート・スレイター著『ソロス―世界経済を動かす謎の投機家』早川書房刊より)。二人のすばらしい力量に、金融界は驚嘆した。
しかし「ソロス」の名が世界的に有名になったのは、1992年9月16日のポンド危機「ブラックウェンズデー」である。ポンドの大暴落を予見し、大きく空売りを仕掛けたのだ。このときソロスが得た利益は10〜20億ドルともいわれ、イングランド銀行は破綻寸前に追い込まれた。「イングランド銀行を破産させた男」として、その名は一夜にして世界中にとどろくことになる。
伝説は今なお続く。2007年のサブプライム問題でも12億ドル超の利益を出したと言われ、彼の言動は世界中に多大な影響力を持ち続けているのだ。
一方、ソロスは慈善家としての一面もよく知られている。例えば、アフリカの黒人生徒に奨学金を援助したほか、社会主義時代の東欧に大量の情報機器を送り、現地の民主化運動を支援した。1994年から2000年までに寄付した金額は25億ドルを超える。「ヨーロッパでもっとも影響力のある一市民」と呼ばれている。
この「史上最強の投機家」にして「史上最大の慈善家」は一体どのようにして生み出されたのだろうか。
ハンガリーに生まれ、第二次大戦でナチスの迫害をうけながらも生き延びた少年時代から、カール・ポパーに多大な影響を受けた大学時代、挫折を味わった初めての就職、そして投機家として名を馳せる現在に至るまで――。本書は大投機家ソロスの波乱に満ちた人生を追い、その投資哲学と姿勢を描き出したものである。
※本書は『マンガ ジョージ・ソロス』を文庫化にあたり、加筆、再編集し、改題したものです。
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