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フィスコ投資ニュース
配信日時: 2025/12/23 12:04,
提供元: フィスコ
アンジェス Research Memo(4):HGF遺伝子治療用製品は2026年からライセンス交渉を本格始動(2)
*12:04JST アンジェス Research Memo(4):HGF遺伝子治療用製品は2026年からライセンス交渉を本格始動(2)
■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向
米国の後期第2相臨床試験では、主要評価項目として「治癒までの期間」と「投与後6ヶ月時点で完全治癒した潰瘍の割合」を設定し、HGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間間隔で4回投与するプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験を実施した。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分類し、12ヶ月の観察期間を設けてデータ収集を行った(被験者数は途中脱落者も想定して全75例を組み入れ)。2024年11月に開催された米国心臓病学会(以下、AHA)にて治験指導医師からトップラインデータが発表されており、「治癒までの期間」がプラセボ群に対して、本剤は大幅に短縮できることが確認された。また、「投与後6ヶ月時点で完全治癒した潰瘍の割合」のほか、「同12ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」及び「同12ヶ月時点の潰瘍再発率」においてもプラセボ群に対する本剤の有効性が確認された。
なお、治験結果の内容については治験担当医師によって作成された論文が、2025年11月にAHAが発行する有力学術誌の「Circuration: Cardiovascular Interventions」※に掲載された。具体的な内容としては、治癒までの期間が本剤で84日だったのに対して、プラセボ群では280日であったこと(p=0.007)、6ヶ月時点で完全治癒した割合は本剤が63.3%だったのに対して、プラセボ群は38.5%であったこと(p=0.053)、12ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合は本剤が77.6%であったのに対して、プラセボ群は46.2%であったこと(p=0.010)が試験結果で確認された。以上から、HGF遺伝子治療用製品は中等度のCTLI患者の潰瘍完治までの期間を優位に短縮し、有望な非外科的治療法となる可能性があると結論付けている。
※ 心臓や血管の病気に対して、カテーテルなどを用いて行う低侵襲な治療法を研究・実践する分野である心血管インターベンション分野に特化した査読付きの学術誌であり、ほかの学術誌に掲載される論文にも参照論文として引用される機会が多く、影響力の大きい一流学術誌として評価されている。
今回の掲載内容は主要評価項目の結果のみであったが、詳細版については2026年早々にも掲載される見込みであり、同内容を持ってライセンス交渉を本格的に開始する。2026年1月には米国の大手証券会社が主催するバイオテック・カンファレンスが予定されており、それまでに詳細版が発表されればカンファレンス期間内に候補各社との交渉も効率的に進めることが可能となる。有力候補先としては、対象患者が重なることの多い糖尿病治療薬を手掛ける欧米系のメガファーマが挙げられる。米国で上市後は欧州での展開も見据えているため、治験指導医師からは米国内だけでなく欧州でも強い販売力も持つ企業を推奨されているようだ。同社では承認申請までにライセンス契約の締結を目指している。
米国での今後の開発方針については、臨床試験を完了とし、生物製剤認可申請(BLA)に向けた準備を進めていくことを2025年8月の取締役会で決定した。今後はFDAと協議を継続しながら申請書類の作成等を進める。また、この決定に伴い、HGF遺伝子治療用製品の製造委託先であるベーリンガーと、承認取得及び上市に向けた原薬の製造体制を構築するための受託開発・製造契約を締結した。従来は、臨床試験用に小規模設備で原薬を製造・供給してきたが、上市するとなれば4,000リットル規模の大型培養設備を構築する必要があり、それまでに一定の時間と投資資金を要することになる。このため、FDAへの承認申請時期は早くて2027年の第1四半期ごろとなりそうだ。同製品はFDAよりブレイクスルーセラピーに指定※されているため、承認取得も最短で2027年内となる可能性がある。
※ ブレイクスルーセラピー指定制度とは、重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する新規治療薬の開発と審査を迅速化することを目的にFDAが導入した制度で、臨床試験の結果などをもとに既存の治療法よりも顕著な改善を示す可能性のある開発品が指定を受ける。
なお、日本における開発方針は、国内の第3相臨床試験結果と米国における後期第2相臨床試験の結果を中心に新たな申請データパッケージを構築し、改めて製造販売承認の申請に向けた準備を進める。まずは、米国での承認取得を最優先に取り組む方針だ。
HGF遺伝子治療用製品の市場規模については、米国だけで少なくとも1千億円を超える規模になると弊社では試算している。米国での対象患者数は調査会社の調べで約50万人と見られる(日本では5千人〜2万人)。このうち承認後すぐに使用する患者数は数万人規模と見られ、これに国内で設定されていた薬価(約61万円/1瓶(4mg))×4回を掛け合わせた。ただし、血行再建術による治療コストと同程度になると仮定すれば、さらに4倍以上の規模になるとの見方もあるようだ。米国で上市されれば日本や欧州にも展開し、世界規模ではさらに大きなポテンシャルを持つことになるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
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