問題形式で読むと、ものの考え方が整理されて、あいまいなところがなくなるのです―― 新刊『矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2』の発売を記念して、矢口新氏に伺いました。
Q. 『矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2』の発売おめでとうございます。そもそも相場力アップシリーズを作ろうと思われたきっかけは何ですか? A. これからは投資というものが非常に大事になってくると思います。 景気を浮揚させるというとき、消費マインドが冷え込むから景気が悪くなるなどと言われますよね。ここで、消費とはどういうことかというと、(お金は)使えばなくなってしまう、ということです。もちろん、消費は生活に必要なだけでなく、使い方によっては生活に潤いをもたらすなどプラスの効果もあるのですが、資産という面で見ると、使った分だけ減ってしまいます。 これまでは消費を称賛するあまり、返済できないほど借金してでも消費して、景気を浮揚させてきたわけです。日本のバブルやサブプライムローンが行きつくところでした。つまり、消費は随分先食いされてしまっているわけです。多くの人が余るほどの物を持ちながら借金を抱えている状態です。消費の低迷はまだしばらく続くと思います。 景気浮揚のもうひとつのやりかたとして挙げられるのが投資です。投資とは、「うまくやれば資金が増える、うまくやらない場合だけ減る」というものです。そして、投資そのものにも、うまくやった場合には、消費に見られるような“生活に潤いをもたらす”とか、ある種の達成感があるなどのようなポジティブな効果があるのです。 でも、世間一般の反応はどうかというと、投資に対しては「危ないものだ」とか、ネガティブな意見が圧倒的に多いですよね。実際に、日本の金融資産で過半を占めるのは“貯蓄・現金”となっています。 そういう実情を見たときに、投資についての誤解を、投資で生きてきた人間の誰かが解かねばならないだろうと思ったわけです。それぞれの立場の人がそれぞれのやり方でやっているのでしょうけど、僕は僕なりのやり方でやっていこうと思ったのです。それが、こういうドリルというか、本を書き始めた一番のきっかけですね。
A. 実は、これを思いついた当時、ドリル本がはやっていたということもありましてね(笑)
A. 問題形式で読むと、ものの考え方が整理されて、あいまいなところがなくなるのです。今回の本も、あえて三択にすることによって「どうして一番の答えではなくて二番なんだ」「三番ではなくて二番なんだ」ということを説明していますから、総合的な理解が深まると思います。 実のところ、プロの投資家、例えばファンドマネジャーやアナリストと言われている人であっても、そこまで整理して考える人は少ないのです。相場は人気投票にすぎないとか言われているわけで……。 あのピーター・リンチですら「1年後の株価はわかるが、明日のことはわからない」などという、僕からすればつまらないことを言うわけですよ。 これは、時間は必ず自分の味方をしてくれるということですよね。ところが、時間がたてば不確実性が高まるのですから、投資にとって時間はリスクなのです。そういう、あいまいな形で運用している人たちが圧倒的多数いて、結局は、サブプライムなどでみんな大怪我してしまっているのです。つまり、相当のレベルの人ですら、相場について十分に整理して考えたことがないのです。 こういうことを言うとえらそうに聞こえるかもしれませんが、どうして僕にそれができるのかというと、そもそも「価格はどうして動くのか」という考えがベースにあるからなんです。すべてを“そこ”に問いかけることによって答えが明らかになるのです。そういった、「価格はどうして動くのか」を考えずに、「人気投票だ」、「皆で買えば上がるでしょ」的なことでやっているのが多くのプロの実情です。誰が買うのか、どういう資金で買うか、つまりポジションの保有期間とかがものすごく重要なわけですから。 そういう意味では、このドリルシリーズにはそれなりの価値はあると思っていますけどね。
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