2021.10.25
<著者プロフィール> 浜口準之助(はまぐち・じゅんのすけ)
約15年にわたり機関投資家のファンドマネージャーとして株式運用に従事。信託銀行などで主に年金資金の日本株運用を行う。その後約14年にわたり投信運用会社にて投資環境のセミナー講師に携わる傍ら個人投資家として株式運用を行い、「億り人」の仲間入りを果たす。「浜口流コア・サテライト戦略」を提唱し自らも実践している。「醍醐味に満ちたライフワークとして、株式投資に勝るものなし」との基本観から、個人投資家に実践的な株式投資手法の研究を続けている。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『黄金サイクルと農耕民族型投資戦略』(パンローリング刊)、ブログ 浜口準之助のテツ・ホテル・グルメ・株式運用 をほぼ毎日更新中、こちらでは旅の話もしている。
浜口です。今回もまた、投資銘柄フォロー・定点観測から始めましょう。
まずは前回の当ブログのアップ日(2021年9月21日)以降の「浜口流コア・サテライト戦略」下記2つの図、上は株価が10月8日時点、下はその2週間後、株価が10月22日時点のデータです。
9月27日にかけ上昇した相場が一旦天井を打ち、その後わずか7日間で約30%前後暴落した商船三井・日本郵船の株価(以下、両銘柄の株価と記す)は、日本郵船はやや上昇・商船三井はやや下落と、まちまちの動きとなっています。今回も両銘柄の投資について考えていきますが、前回の結論、「商船三井・日本郵船とも、難しい銘柄になってしまったな」という感を引き続き禁じえません。これが素直な印象です。これは後段で、詳しく触れます。
当ブログで披露している投資環境見通し、相場観については、方向性として変化ありません。景気敏感バリュー株は足元で乱高下しているが、徐々に上昇に転じる銘柄が多くなろうと考えます。ここに掲載している銘柄群については基本、継続保有で問題なしです。海運株は別途、考えていきます。
もう一つの投資戦略、「商船三井ロング・日本郵船ショート」について説明します。
上のグラフは10月8日時点、下はその2週間後、株価が10月22日時点のデータです。 10月22日時点で商船三井の株価は6,560円、一方で日本郵船は7,770円と、株価の単純比較では1,210円ほど郵船が高い状況です。前回と比較して両銘柄のさやは460円拡大しています。両銘柄の株価比較では、商船三井の方がより人気がない状況ですが、この違いを説明する理由は見当たりませんが…この点は後述します。
私は現在も引き続き、このポジションは持っていません。今後、どうするのか。さやの方向次第では、このポジションを仕掛けてみたいと思っています。なぜか。
日本郵船が商船三井よりも1,210円も上さやというのは、近年、ほとんどない状況です。両銘柄とも今週から来週にかけ、中間決算発表を迎えます。これをきっかけに、さやが緩やかに縮小方向に転じる動きになったら、このポジションを徐々に仕掛けようかなと。どうなるか……
なおグラフは過去3カ月の商船三井と日本郵船の株価を示したものです。グラフは日経SmartChartPLUSを用いて、概ね、重なるように作っています。 (日経SmartChartPLUS)
さて、ここからは今回のメインテーマ、「難しい銘柄になってしまったな・・・商船三井・日本郵船」について考えてみたいと思います。前回のテーマが「高値から30%の暴落!!商船三井・日本郵船の今後は」ですから、両銘柄の相場観について、やや失望方向になっていることがわかります。
商船三井(チャートギャラリー)
日本郵船(チャートギャラリー)
ここに示しているのは、両銘柄の過去6か月のチャートです。両銘柄とも、ファンダメンタルズに大きな変化はない。日本郵船は10月5日にザラ場安値7,000円をつけて戻り歩調のようにも見えますが、商船三井はその後遅れて、10月15日に6,180円の安値を付けます。暴落後の株価は行ったり来たりに見えますが、先週だけを考えてみると、両銘柄とも一日だけ大きく上昇した日があり、それ以外の日は前場30分程度はゆるゆると戻すのですが、その後発作的に急落。引けにかけてはやや戻す。そんな展開の日が多かった。ボラティリティは低下してきているように見えますが、それは9月以降の急落と比較しての話でして、少なくとも両銘柄とも株価がコツンと来て、右肩上がりになりつつある状況ではありません。
日本郵船の方が株価に勢いがありますが、これは前述の通り、商船三井の決算発表日が10月29日(金)であり、日本郵船が11月4日(木)であるため、決算発表に伴い、「材料出尽くしになる心配ごと」を、商船三井はより早めに織り込んでいるとの見方もできなくはありません。前段で説明した「両銘柄のさやの開き」についても、このことが影響しているのかもしれません。
このグラフは、中国最大の総合海運会社であるCOSCO社(中遠海運控股)の株価推移です。商船三井・日本郵船の株価は9月27日にかけ一旦天井を打っている点で概ねCOSCO社と重なりますので、その日以降のCOSCO社の株価動向が参考になると思います。同社は10月8日に、2021年1−9月期決算の決算発表を行いました(12月が決算期末なんですね)。決算内容は素晴らしく、具体的にはこのリンクをご覧いただきたいのですが、それ以降の株価推移をみると、冴えない展開ですよね。
一方で強気材料もある。国内の海運アナリストは、強気の方が多いですね。その中でお馴染みの方のレポートを。
MorganStanley MUFG証券の海運株アナリスト尾坂さんの10月15日付レポート。割安感強く、Attractiveを再強調とありますね。 長くなりました。そろそろ総括を。
繰り返します。両銘柄は人気化した後、これまでと株価変動のパターンが変わってしまった。両銘柄とも、「取る」のがとても難しい銘柄に変化してしまった。残念だが、このことだけはお伝えしなければならない。ここは大事なところです・・・と前号に書きましたが、この思いは強くなるばかりです。
セルサイドアナリストは、「良好なファンダメンタルズに変化なし」と繰り返しますが、この点はもうじきやってくる中間決算の数値、それに基づいたアナリストの見方の変化に注目しましょう。
決算発表は、今期は好業績見通しであることは間違いない。問題は来期以降ですね。出てきた数値に対する株価の反応が「期待以上」となるのか「織り込み済み」となるのかは、事前にはわからない。ただし前述したCOSCO社の事例は、気にはなりますね。
私は現在、両銘柄はそれぞれ100株だけ保有している状況です。まあ試し玉ですね。現状、中間決算プレイには参加しないつもりです。但し私は、君子豹変すを旨としています。決算日にかけてのニュースフロー、決算内容、そして発表後の株価の方向性次第で、再エントリーする可能性はあります。
いずれにせよ、10月29日(金)の商船三井、11月4日(木)の日本郵船の決算発表はとても大事です。期待を超えた決算であることをお祈りしますが……これを前後しての玉の捌きはどうするのか。これは皆さんの相場観にお任せしたいと思います。そして最後に、前号で書いた以下のことを再強調させていただきます。
覚えておいて欲しいこと……当ブログを開始したのは今年の4月12日であり、当時から私は、両銘柄に注目していました。この頃の両銘柄の株価は、ともに4,000円前後でした。当時から両銘柄に投資している方は、私自身も含め、現時点で資産は増加していると思います。一定の果実は得た。その状況を受け止め、喜んでいただければ嬉しく思います。
以上です。今回はこの辺で。みなさんの株式運用の参考になれば幸いです。
なお皆さんの株式運用は、くれぐれも自己責任でお願いします。ここは強調させていただきます。