投資参謀マンガー

『チャーリー･マンガー』 バフェット関連の書籍では、お馴染みの名前ではないでしょうか？バフェットのオチ係とでもいいましょうか、非常に愉快な役回りを担っている、あの彼です。

チャーリー･マンガーは、師グレアムに並んで頻出する人物です。バフェットに大きな影響を与えたことは、その頻出の度合いから見てもうすうすわかるのですが、どんな人でどんな経歴なのかは、ほとんど語られてきませんでした。

そんな気になる人物、チャーリー･マンガーの生き様を描いた愉快な１冊が、本書「投資参謀マンガー」です。本書は、ややもするとバフェットの影に隠れてしまいがちな非凡な才能の持ち主を満天下に知らしめた名著で、バフェットに劣らない個性的で『強烈』な魅力を備えており、本書の随所で個性的な彼の姿に触れることができるでしょう。

本書は大きく３つの特色があります。ビジネスと投資で成功した人物の「控えめな」伝記、投資の経験談に加え、示唆に富んだビジネス書という側面があることです。

バフェットの名声が巨大すぎるため、えてしてバフェットの影になりがちなのですが、どうしてどうして、このバフェットの片腕にしてバークシャーの副社長のチャーリー･マンガーもたいした投資家です。

マンガーは弁護士事務所や投資会社を経営し、不動産投資でも成功を収めてきたマルチな能力の持ち主で、現在は金融会社ウェスコ(WESCO)のＣＥＯとして、メッセージを送り続けています。そんな彼も、長男の死、離婚、失明、もちろん投資の失敗も含め、人生の大きな試練に向かいながらも挫けることなく「金持ちになる事」に突き進んだ１人です。

何倍もの幸運を生み出す人生の成功の秘密があることが、本書の伝記部分で最も印象に残りました。運命の機微といいますか、不思議な効用がある出会いの存在を「賢人同士の交錯」の単元を読めば、その不可思議さに思いを馳せるかと。

運命的な出会いは不思議に縁があります。子供の時分には、マンガーはバフェットの祖父の店でコキ使われてたり、長じてからも、その師グレアムとも不思議な面識がありました。マンガー、バフェットのそれぞれがいかに優れた能力を持っていたとしても、彼らが出会わなかったらこうも巨大な成功を納めることはできなかったでしょう。「うまくできている」とは、この二人のことを指して言うかの如くです。

投資の研究としても本書は優秀な資料です。ブルーチップスタンプ社、シーズキャンデー、バァファローイブニング社の買収過程を丹念に掲載しており、その他、フレディ・マック株の買い入れなどのマンガーの役割や成功への機軸をなぞることで、理論や方法を学ぶだけでは得られない、成功した投資家の生きた姿と教訓を学ぶものと思います。

マンガーは教育者としての面もあり、ハーバード大学の理事になったことからも、巻末のおまけにある非公式の講演記録も興味深く読めます。マンガーが非常な知性を備えた人物であることが、これでハッキリするのではないでしょうか？

様々な知識を動員したコカ・コーラへの投資決定のプレゼンは、最も説得力あふれたものですし、もうひとつの講演記録の「実際的な問題解決法」のウンチクは読者に株式投資に限らず大いに資すると思います。

ちなみに、わたしの本書の読後感は「お買い得だね」でした。優秀な成績を残し、すばらしい才能を持った人物の生き様を追うことがこんなにもおもしろいものか、と改めて伝記を読むことの重要さを悟ったものです。

筆者のジャネット・ロウは、バフェットの言語録を出版していることから、彼らのやり方や雰囲気をうまく掴んでいるので上手にマンガーが描けています。この点でも、本書は良い仕事だと思います。ま、本書のネタ元のチャーリーが個性的過ぎるからかもしれませんが、材料の選択に成功していることに拍手を送りましょう。蛇足ながら、邦訳も及第点で日本語の文章としてストレスなく読めることを明記しておきます。

(くらげ　20代　会社経営　「初心者投資」管理人)

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